ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち- 』〜俺たちは兄弟だ!〜
そういえば、昨年の今頃も"革命"を観ていたような・・・🇳🇱
というわけで、229年前のフランスに想いを馳せながら、熱く美しい革命劇を観てきました。
私が説明するまでもない有名な物語だとは思うのですが、例によって例のごとく、がっつり公演の内容に触れますので、お気をつけください。
<ストーリー>
民衆は貧困にあえぎ、貴族は贅沢に溺れる18世紀末のフランス―。
農夫ロナンは父を貴族に殺害されたことをきっかけに、
パリへ飛び出し、革命派に身を投じる。
ロベスピエール、ダントン、デムーランら熱き仲間を得て、新しい時代に希望を燃やす。一方、宮廷に仕える心優しき侍女・オランプは
マリー・アントワネットとフェルゼン伯爵の逢瀬を手引きしてパリにやってくる。
マリー・アントワネットをつけ狙う一味との騒動に巻き込まれたロナンは
オランプと運命の出逢いを果たす。決して出逢う筈のなかった二人は強く惹かれ合うも、対立する身分が壁となる。
そして、愛に悩む彼らの心を揺さぶるかのように革命の足音が近づいてくる…。1789年7月14日、バスティーユ牢獄襲撃。
遂に革命の火蓋が切って落とされる―。
まず初めに、一言言わせてください。
渡辺大輔さんが!!よかった!!すごく!!!!!
「武器をとれ!」
さすがは、最近よく聞く音楽の話になって、「正直に言っちゃうと、ミュージカル楽曲しか聞かない・・・」とおっしゃる渡辺さん。
初演ではいろいろと、悔しい思いをされたみたいで、今回の再演では意気込みというか決意というか、舞台にかける"思い"が痛いほど伝わってきました。
もともと、生まれもった"声"に恵まれている方なので、低く力強い歌声が本当に魅力的です。
私が渡辺さんを、いいなぁと思うところの一つ。
「人を褒めるのが上手なところ」です。
誰かを褒めるって、案外難しいものです。
それも同業者で、同世代の同性となると、仲間でもありますがライバルでもある。
悔しさも相まって、褒め言葉を言うにもなかなか素直になれない人が多い中、人の良いところをサッと心から言ってのける、それも人前で言えるあたたかさが、すごく素敵だと思います。
そんな人の良さが滲み出ている渡辺デムーラン。
今回そこに最強の歌声が加わったことで、ただの"いいヤツ"ではない、強い意志を持った革命家らしさが良く出ていて、月並みな言葉になってしまうのですが、すごく感動しました。
「自由になったらまた会おう」
▷ロナン・マズリエ(加藤和樹さん)
そして、マタ・ハリは観に行けなかったので、フランケンシュタインぶりの加藤さん。
ロナンという役は、初めて見ると「いや情緒不安定すぎん?」となりがちで、感情移入できない方も多そうなキャラクターですが、加藤さんのロナンはとても説得力のあるロナンです。
特に一幕終わり。
ロベスピエール・ダントン・デムーランの三人を信じたいのに、今までの苦労経験がそれを邪魔してしまうという彼の葛藤は、グッとくるものがあります。
私は大体、ここで既に泣いています。
ああやって強がってはみるものの、本当はとても繊細で純粋な青年なのだと、ロナンの気持ちに納得せざるを得ません。
そして、加藤さんの歌。
ソロももちろん好きなのですが、個人的にはデュエットが大好きなんです。
神がかったハモりセンスを持ってらっしゃる。
相手の気持ちを汲み取って、合わせるのがお上手なのか、はたまた持って生まれた声質が為せる技なのか・・・
レディ・ベスの平野綾さんとのデュエットのときも思いましたが、今回の神田沙也加さんとのデュエットも、すっごく心地良いハーモニーでした。
「自由とは、他人を害さないすべてのことをなしうることである」
▷オランプ・デュ・ピュジェ(神田沙也加さん)
加藤さんがとても大きい方なので、華奢で小柄な神田さんだと妹のように見えてしまうのではないかと、加藤ロナンにはねねさんの方が相性がいいのかなぁなんて勝手に思っていましたが、とんでもなかったです。
聡明でドが付くほど真面目ですが、とても不器用でいじらしい女性。
「そんな生き方しかできない」の台詞に、胸を打たれました。
わかる〜〜〜(泣)と思ってしまう。
オランプちゃんは、マルチタスク苦手人間と見たぞ・・・!
見た目も中身もすごく可愛いので、「オランプちゃーん!」となるラマールの気持ちもよくわかります。
「愛する人の元にお行きなさい」
▷マリー・アントワネット(凰稀かなめさん)
王妃がオランプに、自分か愛する人どちらを選ぶのか問うシーン、号泣ものです。
いつまでも世間知らずの女の子だったアントワネットが、慈悲深い"フランス王妃"へと成長していく、とても人間らしいかなめさんのマリー・アントワネット。
お顔がものすごく小さく、すごく可愛らしい方で、元男役には見えません・・・
フェルゼンとのシーンは、本当に乙女モード全開で、アントワネットは子どもがそのまま大人になったような人だなぁと思います。
初演のお花様も観たかったなぁ。
「誰のために踊らされているのか?」
三浦さんは、ダンスのような演技をされる方ですよね。
所作の一つ一つ、手の動きなんかが、踊っているみたいにしなやかで、好きです。
初演の古川さんは、冷徹というか、あまり感情を露わにしない、恐怖政治の片鱗を見せるロベスピエールでしたが、三浦さんのロベスピエールは、すごく感情豊かで、"アツい"。
渡辺「最後にロナンが死ぬシーンで、ふたり(ロベスピエールとダントン)の嘆き方がとても大きいんです。でも僕は冷静。...前回はそれが、逆だったじゃない?」
上原「そうだった」
渡辺「デムーランがボロボロ泣いていて、ロベスピエールとダントンに肩を叩いて慰められたりしてた。でも今回はそれが逆になっている、ロベスピエールがボロボロになってるっていうのが、その後の彼らを考えるとゾッとしちゃって」
上原「だからこそ袂を分かつ、みたいな?」
渡辺「うん、(ロナンの死で)ロベスピエールの中で何かが弾けて、そのまま...」
上原「どんどん恐怖政治に向かっちゃう、というね」
【1789特集(7)】革命家トリオ登場! 三浦涼介&上原理生&渡辺大輔が語る『1789 -バスティーユの恋人たち-』 - げきぴあ
史実では、ロベスピエールとデムーランは対立してしまいますが、「革命の兄弟」と歌った彼らのことを想うと、切ない気持ちになりますね。
二人とも処刑されてしまいますし・・・
三浦さんのロベスピエールは、迷いというか葛藤というか、一人の人間が壊れていく姿を、表現しているように感じました。
「モテない俺に乾杯!」
▷ジョルジュ・ジャック・ダントン(上原理生さん)
とか言って、実のところコイツが一番モテてんだろうな〜〜〜!!!!と思わせてくる上原ダントン。
さすがの歌唱力で、上原さんが出てくると妙な安心感がありますね。
すっかり革命家俳優になられた上原理生さんですが、マイクの入っていないときに、アドリブらしき台詞をよく呟かれて、すごく面白いです。
何ておっしゃっているのかは、いつもよくわからないのですが・・・(笑)
「綺麗事だけじゃ生きていけないわ」
▷ソレーヌ・マズリエ(ソニンさん)
圧倒的カリスマ。
何でしょう、あのソニンさんの存在感・・・
ソレーヌ一人で革命成功するんじゃないかと思わせてくれるあのオーラには、鳥肌が立ちます。
強い女性ですが、やはり彼女もロナンと同じく繊細で純粋な人なので、ダントンに出会えてよかったなぁと。
パン屋襲撃を止めに来たダントンに優しく抱かれるソレーヌを見て、そう思いました。
止めてくれてよかったと、ホッとしているような姿がいじらしいです。
「私は神だ!」
▷シャルル・アルトワ伯(吉野圭吾さん)
「私は神と同じだ」と歌っていたのが、最終的には「私は生きた神なのだ」と、勝手に神様に昇格してしまうのが面白すぎて、すごく好きです。
アルトワは、敵なんですがちょっと抜けていて、可愛げがある憎めないキャラクターですよね。
地位や権力でしか、愛を手に入れられないと思っている、「そういう生き方しかできない」悲しい人。
好きな子をモノにしようとして思い付いたのが、催眠術と媚薬って・・・こじらせてる〜〜〜!!!!
彼もロナンやオランプと同じく、すごく不器用な人なんだと思います。
その不器用の方向が、すこし違っているだけで・・・
「危険分子は連行致しました!」
▷オーギュスト・ラマール(坂元健児さん)
サカケン劇場に迷い込んでしまった・・・
めちゃくちゃ面白いのに、めちゃくちゃ歌上手い。
心配ないさ〜〜〜!!が頭をよぎってしまう・・・
面白いんですが、ただめちゃくちゃやるのではなく、すごく周りの空気を読んで笑いをとる方だと思いました。
なんだかんだでオランプは、ラマールに何度も助けられているのでは。
登場するだけで会場の爆笑をかっさらってしまうサカケンさんに、拍手。
「あなたと、あなたの愛する家族を守りたいのです」
▷ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン(広瀬友祐さん)
デカい。
とにかく大きくてかっこよくて、「イケメン」というより「いい男」と言いたくなる広瀬さん演じるフェルゼン伯爵。
あまりのお顔の整い具合とスタイルの良さに、じっとしているとマネキンさんのようです。
史実ではフェルゼン伯爵が国王一家を逃すため尽力するのですが、果たしてその判断が良かったのか悪かったのか・・・
亡命は失敗、民衆の怒りは爆発し、王妃は処刑されてしまいますからね。
そのせいで、伯爵自身も自暴自棄になってしまい、とても悲しい最期を迎えてしまうので・・・
「国王陛下の名のもとに」
▷ラザール・ペイロール伯爵(岡幸二郎さん)
ペイロールは、一見堅物クソ真面目な男性に見えますが、アレは変態なんだと思います。
でも岡さんだとかっこいい。
めちゃくちゃいい声。
「サイズ感から個性から、全然違いますからね。ペイロールとしては、小池徹平くんの方が『いたぶってる』感が強い(笑)。加藤くんも言ってましたもん、『なんか小池くん、かわいそうになってきた』って(笑)。私はここで鞭を使うんです。宝塚版でも星条海斗さんが使っていましたけど。最初、小池先生は使わないっておっしゃっていたんですが、鞭職人に自らオーダーなさったんですって。叩いても痛くない鞭で、音も鳴らないはずだったんですけど初日に私がやったらピシッと鳴って。小池先生もお喜びのご様子でした(笑)。
ミュージカル界の濃い貴公子、岡幸二郎が斬新なフレンチ作品で咲かせる悪の華! : 若林ゆり 舞台.com (2) - 映画.com
いや、変態なのは小池先生なのかも・・・
まだまだ触れたいことがたくさんあったはずなのですが・・・やっぱりブログ書くのって、すごい体力使いますね。
言ってしまえば自己満みたいなものなので、忘れないうちに書いておこうとは思っているのですが。
しかし、加藤和樹さん、渡辺大輔さん、三浦涼介さんのお三方が肩を組み、「俺たちは兄弟だ」と歌い上げる姿には、グッとくるものがある。
それはきっと、今日のミュージカル界を担う次世代の若者たちの姿が、229年前、フランスで自由を求め立ち上がった若者たちと、重なるからなんだと思います。
身分関係なく、全ての人々が地に一直線に並ぶ中、ロナンだけ天にいるあのラストは、涙なしには見られません。
オランプの悲痛な叫び、そして革命家三人の、あの無念の表情が、頭からこびりついて離れない。
人はいつの日にか
辿り着くだろう
愛と平和に満ちた
輝く世界
いつの日か*1
「自由になったら会おう」と誓ったロナンとオランプ。
切ない約束だと思います。
"自由"とは、"他人を害さないすべてのことをなしうること"。
ロナンはやっと自由になれたんだと思うと、もう泣けてくるったら・・・!!!!
そんでもってカーテンコールでは加藤さんが一番最後に出て来るんですから、そりゃあもう、胸熱です。
あぁ、相葉さんの0番も見たい・・・
2019年の相葉さんは、革命家になる前にバンドプロデューサーになるみたいです。
twitter.com2018年12月~2019年1月ミュージカル「オン・ユア・フィート!」エミリオ・エステファン役として出演します!チケット先行予約に関してはグランアーツメルマガにて配信しますのでお待ちください(*^_^*) https://t.co/m4Abe8qQvI pic.twitter.com/IHFaC5S5Ey
— 相葉裕樹 (@aibatchi) 2018年7月13日
ブロードウェイ版のハイライトを見た感じだとがっつりラテンショーな雰囲気で、渡辺さんはめちゃくちゃ「っぽい」んですが、相葉さん、どうでしょうか。
いずれにせよお二人とも楽しみです。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。
ボンニュイ!