ミュージカル「レ・ミゼラブル 」/ マリウスとアンジョルラスと、推しのこと
アンジョルラスは、やっぱり“カリスマ”だ。
さて、そこで「2017年の相葉アンジョはカリスマだったか」と問われると、確かに、世間一般で言われるようなカリスマとは少し違ったかもしれません。
典型的なカリスマ像でいうと、間違いなく、上原理生さんのアンジョルラスが頭に浮かびます。
カリスマ性のある人って、第三者からすると少し恐ろしく感じること、ないでしょうか。
何の根拠もない個人的な考えで恐縮なんですが、“カリスマ”と言われる人に共通するのは、人間のアドレナリンの分泌を刺激することのできることのような気がしています。
上原さんのアンジョルラスは、まさにそうでした。
第三者からすると、少し狂ったように見えるあの空間。
自らの命を投げることも厭わない。
アドレナリンが出ていると傷の痛みを感じないのと同じように。ホッと一息つくとじわじわ痛くなる、アレ。
であるとすると、相葉さんのアンジョルラスは、そんなカリスマ的な先導の仕方ではなかった。
あの空間に、狂気も感じなかった。
“若さ”というものの刹那性を体現したような、青く、美しいアンジョルラス。
表情は固く、笑顔もほとんど見せない。
ABCの友は、アンジョルラスという御旗に集まった集団なんだとよくわかります。
私は、リーダーには二種類あると思っていて、
一つは、自らガンガン引っ張っていく、それこそカリスマ性のあるワンマンリーダー。
もう一つは、「この人のために動きたい」と思わせる魅力のある、傍をスーパーサブで固めた人たらしのリーダー。
相葉アンジョは、後者です。
そんな前置きをした上での、2019年の相葉アンジョ、めちゃくちゃ宗教でした。
いや、本当に、狂った集団でした。
とりあえず語りたいキャストだけ語っていこうと思うのですが、長くなりそうなので、本記事ではマリウスとアンジョルラスのトリプルキャストのみなさんについてお話しようと思います。
演技指導が入ったりするとまたいろいろとアプローチが変わってきますし、ご本人たちも回数を重ねる中でいろいろと感じるところがあるでしょうし、また組み合わせによっても全然見え方が違ってきますし、一概にこう!とは言えないので公演毎にまとめるのが一番なんでしょうが・・・諦めました!!!
それぞれ、自分が見た順番でまとめております。
マリウス
▼内藤大希さん
やっぱり私は、内藤マリウスが好きだ。
個人的に、マリウスというキャラクター自体にはあまり魅力を感じないので、演者さんのお陰で好きになるのが、楽しいです。
純粋で、感受性が豊かで、とても感情移入できるマリウス。
コゼットのものだと勘違いして、オッサンのハンカチの匂いを嗅いでいたおまぬけエピソードも頷けます。
海宝マリならそんなバカやらないだろう、と思っていた日が私にもありました。
そして、アンジョルラスに心から憧れているのがよくわかる。
「狂いそうだ」とまでコゼットに恋い焦がれ、感情を昂らせていたのにもかかわらず、アンジョルラスにたしなめられるとすぐに「あぁ、そうだった」と顔を引き締め直し、目をキラキラさせながら従います。
それだけに、1幕終わりのワンデイモアの表情を見ると、本当に泣けてきます。
あんなに子犬のように喜び回っていたのに、涙を堪えて列に入りアンジョルラスの横に並ぶマリウスを見て、本当の自分がわからなくなってしまうんじゃないかと心が痛くなるくらい、腹を括った男でした。
個人的に、マリウスの唯一かっこいいシーンは最後の結婚式でテナをぶん殴るところだと思っているのですが、ここは内藤マリが一番好きです。
そのあと「幸せは続くよ」とコゼットを連れていく内藤マリがあんまりにもいい顔をするものだから、「本当にこれが私の知っているあのマリウスなのか・・・?」となる。
内藤さんは、人を惹きつける表情を作るのが本っ当にお上手なんですよ。
お顔の系統でそう見えるのかもしれませんが、すごく上手。
相葉さんも、内藤さんと一緒だと「ブチ上がる」とおっしゃっていたように、戦友感がすごくよく伝わってきます。
多くを語らずとも、阿吽の呼吸で進む感じがまさにそうです。
▼海宝直人さん
ちょっと誰〜??かっこいいマリウスとか言ったの??(私です)
めちゃくちゃ浮かれポンチじゃん。
・・・今更ながら、海宝さんってすごい俳優さんですね。
2017年を観ていてよかったと思いました。
頼もしくて、下手するとアンジョルラスよりリーダーっぽかった海宝マリウスが、あんなに恋に溺れるヘニャヘニャ男になっているとは。
アンジョに制されても、全然上の空だし全然聞いてない。
海宝さんの中で、この二年でマリウスの解釈が変わったんでしょうか。
エポニーヌの最期は、内藤マリ同様自分を責めているし、動揺しているのもよくわかるんですが、途中からは彼女の気持ちを尊重し、幸せな気持ちのまま見送ることに専念するのが、あまりにもリアコ製造機でこりゃあ好きになるな、と納得してしまう。
浮かれポンチとは言っても、やっぱり海宝直人ですよね。
とても主人公感の強いマリウスでした。
▼三浦宏規さん
2019年の内藤マリ・海宝マリでは感じられなかった、「お前さぁ・・・」という気持ちを感じることのできる、最高にマリウスマリウスしたマリウス。
私があまりにも、内藤マリウスが一個人として、人間として好きすぎるので、三浦さんのマリウスを見て、ハッとしました。
レミが好きならこのマリウスが正解なのではないか、と。
なぜなら、マリウスが好きだと感じたら、それはもうマリウスではないのかもしれないから(哲学)。
私は、内藤さんが演じる“あの男の子”のことが、すごく魅力的だと感じているだけなのかもしれないな、と気付かされました。
三浦マリはなんてったって、砦のシーン、エポが死んでからがめちゃくちゃいいんですよ。
不貞腐れ具合が最高にマリウス。
「ほんっとコイツ・・・」って思うのが、すごく気持ちがいいんですよ。
気持ちがいい。
弾を取りに行くくだりなんて、特に相葉アンジョとのタッグだと、余計に世間知らずな夢見る学生たちの集まりって感じで、あ〜これこれ、となる。
アンジョルラス
▼小野田龍之介さん
「小野田アンジョは青い」という声を聞いていたので、前半はどこが青いんやひたすらにカリスマやないかいと思っていたら、最後、一気に覆されました。
青かった。
めちゃくちゃ青かった。
ただそれは、俳優・小野田龍之介の中で、計算し尽くされた青さで、鳥肌が立ちました。
一幕の絶対的カリスマ安定感と、最期の豹変っぷりの落差に、ボロボロ泣きました。
打たれたガブを抱きとめた後、その震える手を見つめる姿があんまりにも若く、どこにでもいるただの青年で、たまらない気持ちになります。
それでも唇を噛みしめ立ち上がり、旗を振り続けるのがいじらしい。
ラマルクの死では、喜んでいるようにさえ見えた。
その姿を見て私は、小野田アンジョも“カリスマ”系のアンジョだと思ったんです。
一歩引いたところから見ると、少し狂気を感じるような集団を作り上げる。
かと思えば、エポニーヌの死では絶望したような顔を見せ、ガブの死でも、ただの一人の青年に戻ってしまう。
親しい人の死にはとても弱く、心温かいアンジョなんだと感じました。
「マリウス、わかるけれど」も「マリウス、少し休め」の声も、とても優しい。
基本的に穏やかで、多少の洒落も受け入れる余裕と度量もある。
すごく作り込まれた、理想のアンジョルラスでした。
2017年の相葉アンジョは初めから革命失敗フラグがビンビンだったのに対し、小野田アンジョはあの頼もしさに成功する希望を垣間見せるからこそ、余計に最期が悲しいんでしょうね。
▼上山竜司さん
冗談通じなさそうな、相葉さんとはまた違ったクソ真面目さ。
学級委員と言われれば、確かにそう見えるかもしれないですね。
だからか、相葉アンジョや小野田アンジョの前では子犬のように走り回っていた内藤マリウスが、少し遠慮しているようにも見えます。
私は個人的に、現実世界で関わるとするならば、上山アンジョが上司にほしいですね。
周囲への声かけがすごく上手です。
全員に対して言うというより、「自分に言ってくれたんだ」という気にさせる、個を見てくれるアンジョルラスだと思います。
「マリウス、少し休め」のときも、声をかけられた方のマリウスは比較的余裕が残っているように見えます。
指示も的確だし、部下はすごく動きやすいけれど、トラブルが起きる前に解決しちゃうから下が育たなさそうな上司。
小野田アンジョは客観的に見られるアンジョでしたが、上山アンジョは、だんだんまるで自分もついて行っているような気になってしまうのと、「自由を」の後の「行くぞ!」があんまりにも優しく頼もしすぎて、思わず「アニキ!!一生付いていきます!!!!」と歯をくいしばってしまいます。
これってやっぱり、小野田さんとはまた違うリーダーなんでしょうね。
あくまで「リーダー」であって、「カリスマ」かどうかまた別の話なのかもしれません。
▼相葉裕樹さん
「花を撃つようだ」と敵兵でさえ命を奪うことを躊躇わせる、美しいアンジョーラ。
グランテールが焦がれたのは、まさに相葉アンジョでしょう。
相葉アンジョが原作っぽいと言われるのは、きっとあの麗しい見た目だけではなく、“自分は礎となり、自由は未来に託す”感が強いからだと思うのです。
「死のう僕らは!敵など恐れはしない!」からの相葉アンジョは、ビカビカ光を放っていて、ものすごいです。
眩しいです。
終始、革命が成功しないということも薄々わかっているように見えるし、ただあの空間に、“名誉の死”みたいなものに、陶酔しているようにさえ見える。
でも、彼の下なら、死に陶酔して最期を迎えることができる気がします。
ただですね、ほんとに、見た目のことは、あまり、言いたく、言いたく・・・な・・・察してください。めちゃくちゃ言いたい
ただ、わかってほしいのは、顔がかっこいい人はたくさんいるじゃないですか。
それこそ芸能人じゃなくても、今時の若い男の子ってみんな小綺麗でかっこいいですしね。
なので、別に目に入ってくる情報だけで「ステキ!」と言いたいわけではなくてですね(言えば言うほど嘘っぽくなりますけども)、舞台上で自分が一番映える立ち振る舞いができるということは、役者として悪いことではないと個人的には思うんですが・・・むしろすごく大切なことなのでは。
どうなんでしょう、難しいですね。
つまり、顔が綺麗でスタイルがいいことと、「美しい」ことは、また別の話なんだと、そう思うのです。
相葉さんは、自分の綺麗な魅せ方をよくご存知でいらっしゃる。
それはものすごい武器だということは、ちゃんと声を大にして伝えたいんですよねぇ。
贔屓目かもしれませんが、背中だけであんなに美しい人、なかなかいないです。
話を戻しますが、相葉アンジョは、迷えるアンジョルラスです。
が、その姿は、仲間たちには見せません。
それは、自分が崩れるとみんなも崩れてしまうとわかっているからです。
もちろん、上山アンジョも小野田アンジョも見せないんですけど、それを“観客にも”見せません。
ただ、その根拠というか動機というか、他二人のアンジョとは少し違いますよね。
相葉アンジョは、自分が声をあげることの価値をわかっているというか何というか、全員を納得させるだけの理屈も口達者さも持ち合わせていないけれど、彼の口から出た言葉は正義になるような、そんな“絶対的存在”な気がします。
仲間たちには弱いところを見せませんが、照明が落ちたときや自分が話の中心ではないときなんかは、結構迷っています。
グランの言葉にも、「違う」と言いつつ、本心ではその気持ちもわかっている。
だから、あの長い指でグランの頬を寄せ、訴えるのです。
それは違うと説得できるだけの講釈はないから・・・ただ、彼があの顔で、あの声で、そうだと言ってしまえば、“そう”なんです。
そんな彼が「これではいけない」とその迷いを振り払いながら立ち上がる姿を見せるからこそ、観客はそのいじらしさに心打たれる。
上に立つ人って、絶対何か言われるし、嫌われるじゃないですか。
それは、弱さを見せないことが大きく関係していると思うんですよね。
人間って「わからない」ものを恐ろしく感じる生き物です。
相葉さんは自らの演技で「愛されるリーダー」を作り上げたんだなぁと、感動しました。
やっぱり私は、相葉さんの演技が好きです。
エポニーヌの死では、折れそうなる心を奮い立たせているように見えますが、まだそこまで「死」というものを理解してないようにも見えます。
ガブローシュの死でやっと、その手に抱きとめた命の重みを感じ、理解し、死の淵でアドレナリンをバチバチにキメて、「自由を」と叫ぶ相葉アンジョは、あれは確かに冒頭に述べた「カリスマ」でしょう。
あんなん、着いていっちゃいますよ誰でも。
2017年はあんなに大天使様だったのに、血の通った人間、革命家になってるんですもん。
「石像になれ」と言われ続けただけある。
ただ、天使の石像には、感情移入はできない。
何かと倒れ方に定評のある相葉さん。
振り返るように身体を捻って砦から落ちる瞬間、とんでもなく美しいから全人類見てほしい。
1:14〜です。
見てって言って見られちゃうんだから、インターネッツってすごい。
相葉さんは元々ダンスをされていたので、“タメ”がとてもお上手です。
そのコンマ何秒かのタメが、美しいんです。
単純にリズムにはめるのではなく、ギリギリまでタメることで、あの花が散るような美しさを生みます。
ただ、冗談が通じなさそうな、一人で突っ走りがちの堅物クソ真面目に見えるのは、相葉さんもしや三枚目癖が付いているのでは・・・と思いました。
みんな大好き、相葉アンジョの「マリウス、わかるけれど(わかってない)」。
でも、「マリウス、少し休め」はすごくいいんですよ。
言った後の相葉アンジョは、「このくらい言わないとお前は休まないだろ」みたいな顔をしていて、愛ある叱責だなぁと、アンジョルラスらしいなぁと思うのです。
twitter.com【相葉裕樹】「レ・ミゼラブル」博多座公演、相葉アンジョ㊗️千穐楽をむかえました♬︎たくさんの応援ありがとうございました!最後の地は札幌!待っていてくださいね(*ᴗˬᴗ)
— グランアーツ (@Gran_Arts) 2019年8月25日
そして博多座は1/1元旦から始まる「ダンスオブヴァンパイア」でまたお会いしましよう。
今回撮った写真📸と2017年の写真📸 pic.twitter.com/DhhbnWeJa4
twitter.comレミゼラブル2019札幌に入りました。
— 相葉裕樹 (@aibatchi) 2019年9月8日
最後まで試行錯誤を繰り返しアンジョルラスとして戦い抜きます。 pic.twitter.com/sE3c5T0cZ2
さて、いよいよ大千秋楽。
相葉さんだけでなく、「レミゼ 2019」が幕を下ろします。
4月からなので約半年、ですか。
相葉さんの好きなところを再認識する半年間になりました。
トークイベントやファンイベント、ニコ生等で垣間見える相葉さんのあの真面目さ、繊細さに、ときどき私は泣けてくるときがあります。
イベントの話はどこまで言おうかいつも迷うのですが、以前、相葉さんが帝国劇場のことを「客席が真っ黒な海のようで吸い込まれそうになる」というように表現しているのを聞いて、胸がきゅっとしたんです。
twitter.comいよいよ明日は場当たりから5日空いての相葉アンジョのゲネプロ。どんな景色になるんだろう。楽しみです。
— 相葉裕樹 (@aibatchi) 2019年4月14日
「30歳までに帝劇に立ちたかった」とおっしゃっていた相葉さん。
その夢が叶った29歳の相葉さんにとって、帝劇はきっとただ手放しに喜んでいられる場所ではなかったんだということがその一言に詰まっていて、なんて美しい言葉を選ぶ人なんだと、愛おしく思います。
現在、それぞれキャスト別に、感想をまとめている最中です。
また文章の整理を終え次第更新いたしますので、お付き合いいただけると幸いです。
相葉アンジョについてもまだまだ語り足りませんので、ぽつりぽつりと話し始めるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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